ペチョロンケ
- etemon666
- 2019年2月4日
- 読了時間: 3分
ハタチくらいん時にアキバのプラモデル屋で壮絶なケンカに巻き込まれたことがある。
5〜6年前のことだろうか。
休日に暇だったおれは御茶ノ水で楽器屋巡りをしたのちにアキバにプラモを買いに行った。
元々プラモは好きだった。
小学校低学年くらいの頃はガンプラが好きで、高学年くらいの頃はスポーツカーのプラモにハマった。
中学生の頃は軽くグレてたので単車のプラモを作ったりしていた。
久しぶりにプラモ欲にかられていたおれはアキバでいい感じのプラモ屋を見つけ、何十分も店内をウロついた。
ガンプラもいい、バイクもいい。
戦車もあるじゃないか。
たくさん吟味したその結果、おれの目に飛び込んできたのは「絶頂丸」とかいうクソイカした名前のデコトラだった。
「ぜ、絶頂丸!?」
一目惚れしたおれは絶頂丸を抱きしめルンルンの気分でレジに向かった。
しかし、なにやらレジでは客と店員が揉めている。
とりあえず後ろに並んでみると、なんとなくケンカの理由がわかった。
どうやらその店にはプレミア物のレアなガンプラが1つだけ存在するらしい。
オタクの客はそれを購入したいらしいが、どうやら店主が売ってくれないようだ。
オタ客「キィィィ!ふざけないでくれよ!おれは客だぞ!早く売れよ!」
オタ店主「これはうちの宝だ!何回言われてもあなたみたいな人には売りませんよ!帰ってくれ!」
おそらくオタ客の態度や口調が気に入らないのであろうが、オタ店主もなかなかの曲者のようだ。
オタ客「なんだとこの野郎!訴えるぞ!」
オタ店主「訴えてみろ!警察呼ぶぞ!」
エスカレートしていくそのケンカはおれが後ろに並んでからも10分以上続いた。
痺れを切らせたおれは後ろから声をかけてみた。
おれ「あのー、すいません」
オタ客「ちょっと待って!今大事な話してるから!」
オタ店主「どうもすいません!どうぞ!こちらのレジまで!」
オタ客「まだ話は終わってないだろ!」
オタ店主「うるさい!帰ってくれ!」
しかしオタ客は一向にレジの前からどこうとしない。
おれ「すいません、すぐ終わるんでちょっといいですか」
オタ客「あーもう!うるさいなー!ちょっと待ってって言ってるでしょう!」
オタ客はおれの肩を強く押した。
オタ店主「てめーいい加減にしろ!」
なんと、オタ客とオタ店主の掴み合いが始まってしまった。
おれ「アワアワ、アワアワ、」
おれはテンパった。
小さい店の中にいるのはおれを含む3人だけ。
おれが止めなきゃいけない。
若干ハタチの若いおれは勇気を出して2人の間に入った。
おれ「ちょちょちょちょ!やめましょ!」
オタ客「離せー!!」
おれは突き飛ばされた。
同時に絶頂丸も飛ばされた。
倒れたおれと床に落ちた絶頂丸を見てオタ客はこう吐き捨てた。
オタ客「しょうもねえもん買おうとしてんじゃねえよガキが!」
おれは恥ずかしくなった。
おれはこんなところで何をしているんだろう。
ブルーハーツを聴いてロックバンドに憧れて大阪を飛び出して東京に来て、いまオタクに突き飛ばされた。
そして買おうとした"絶頂丸"というデコトラのプラモをオタクにバカにされた。
たしかにな。
絶頂丸ってなんだ。
絶頂丸て。
ハタチのフリーターがアキバのプラモ屋で絶頂丸て。
ハタチのフリーターがアキバのプラモ屋でオタクに絶頂丸をディスられるって。
母ちゃんが知ったら悲しむだろうな。
2人のケンカは続いていた。
おれは絶頂丸を置いて静かに店を出た。

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